ある時いつものように彼の家に行くと彼はいなかった。2時間待っても3時間待っても買い物から帰ってくる様子もない。こんなことは今までになかった。電話をしても、圏外。待つということはこんなにも不安なことなのだとぼんやりと思いながらあと少し待とうと思いながら4時間が過ぎた。
連絡が取れないまま2日が過ぎた。今までに2日も連絡を取らなかったことはなかった。なにかあったのだろうかと不安でどうしようもなかった。3日目の夕方、うつらうつらしていた私は携帯の音にあわてて飛び起きた。どきどきしながら電話に出ると、それは知らない男の人の声で、今度は別の意味でどきどきしながらそのひとの発する言葉たちを聞いた。
彼は不法滞在により入国管理局に収容されている。面会を求めているので身分証明書を持って面会に来てあげて欲しい…
意味が良く分からなかった。入国管理局?不法滞在???
次の日とにかく私は彼に会いに入国管理局へ行った。面会は15分間ガラス越しで見張りつき。なんでこんなことになってしまったのだろうと、いろんな感情が一気に噴き出して来て、彼の前で初めて泣いた。ひさしぶりの大泣きだった。ついこの間まではふたりでだらだらと過ごしていたのに。あのいとしい時間たち。
彼はただ悲しそうに泣くな、と言った。でも私は自分を抑えることができなかった。初めて彼の前で吐露した感情は彼も自分も痛めつけるものでしかなかった。